代理店戦略=再考1=
8. [実践編 その5]戦略実行力を高める人材育成はなされていますか?

2019.09.14

前回のコラムでは、戦略・支援策の実行とそのマネジメントについて、本社と現場の役割分担と連動・連携について考えてきました。どれほど良い戦略(競合との差別化が図られ独自性のある戦略)が立案され、どれほど役に立つ支援策が用意されても、その戦略を具現化するための活動や支援策を活用し成果を上げるためにドライブさせることができる人材がなければ、絵に描いた餅になってしまいます。
今回は、その戦略や支援策を実行し成果を上げるための人材育成について考えてみたいと思います。

■戦略の実行に必要なこと

まずはコミュニケーションの問題が挙げられます。本社と現場、上司と部下といった戦略を現場で実行するための複数のコミュニケーションパイプを太く強くする必要があります。「コミュニケーションだったらやっている」「指示命令系統はしっかりとできている」といわれる方も多いと思います。私が定義しているコミュニケーションとは、「発信者(戦略の出し手)の意思や考えを受信者(戦略の実行者)にきちんと伝え、理解・納得を得て、発信者の思うように行動を取ってもらうこと」となります。行動につながらなければコミュニケーションを取っているとは言えません。コミュニケーションは情報の発信・受信だけでなく、人材育成にもつながってきます。

そして情報や知識が挙げられます。自社の業界に関すること、顧客の業界に関すること、代理店の業界に関すること、など挙げ始めたらきりがありません。これらは現場へ提供したり現場で見聞きしたりすることで身につける(保有する)ことはできますが、それを使える形にしていくためにはやはり工夫が必要となります。代表的なものとして自社製品・サービスの導入事例が挙げられるでしょう。導入事例を共有している企業は非常に多いと思いますが、現場(戦略の実行者)の方を見るとその事例を深く理解しておらず代理店や顧客に対して提供をするだけで終わってしまっているケースが多く見受けられます。その事例を目の前の代理店や顧客に対してどのように使えば成果が上がるのかといった視点が欠けています。

最後にスキルが挙げられます。代理店や顧客のことを知るための「傾聴・質問」、問題を発見し解決するための「問題解決」、提案を組み立てるための「企画立案」、提案を相手に伝えて意思決定・行動してもらうための「プレゼンテーション」などです。このスキルの点でよく見受けられるのは、「知っていること」と「できること」に大きな隔たりがあり、多くの場合「知っている」レベルで終わってしまっているということです。スキルが高まらない理由としては、常に現場で実践しなければ身につかず時間がかかるということです。また、自分が「できる」レベルにいるかどうかを客観的に評価することが難しいといったことも挙げられます。ですので、日々の活動自体をトレーニングの場として根気強く取り組むことが求められます。

■人材育成のベースはやはりOJT

以上の点から見てみると人材育成の場としてベースとなるのは、現場での活動と言うことになります。OJT(On the Job Training)といわれ、日常の活動を通して育成を図るというものです。そこで大きな鍵を握っているのが現場マネジャーとなります。

OJTにおける現場マネジャーの重要性を以下に挙げます。その重要さがよくわかります。

   1.本人を最もよく知っている人からの影響が最も大きい
   2.本人の「強み」「改善点」を最もよく理解している
   3.職場の仕事なのでお手本を示すことができる
   4.改善の進捗を近くで見ている、誉めやすい
   5.身近にいるためにフィードバックがしやすい
   6.身近にいるため信頼関係を築きやすい

また、OJTにはサイクルがあり、このサイクルをまわすことでトレーニングの効果も上がってきます。

   1.目的と期待レベルを明確に示す
   2.お手本を示す
   3.実際にやらせてみる
   4.振り返り・復習をする

ここまで見てみるとOJTの重要性と現場マネジャーの役割の重大さがお分かりいただけると思います。ですので、企業の教育(研修会など)についてのご相談ではこのマネジャー層の強化がテーマになることも非常に多くなってきています。

ただし時代は激しく変化してきており、マネジャーがプレーヤーであったときの経験が通じない(経験が必要無いということではありません)場面が増えてきている状況下では、OJTだけでは人材育成も不十分であるといえます。そこで集合研修に代表されるOff-JT(Off the Job Training)を効果的に使うことがポイントになります。昨今では「知識詰め込み型」の研修会はほぼ影を潜め、代わりに「実践・アウトプット型」の研修会が増えてきました。受講者自身が担当している代理店を具体的に取り上げ、その代理店に対する戦略や計画を組み立てると同時に現場活動をリンクさせていく、いわゆる「営業会議+トレーニング」的な要素を研修会に取り入れていく形です。この方法であれば、受講者は自身の担当する代理店を題材に挙げるので意識が高まりやすく、行動に起こすことができるといったメリットとして挙げられます。これらを拠点単位で実施することで情報の共有にもつながります。

■代理店戦略を実行し成功させるためには

ここまで、「代理店戦略=再考=」として全8回にわたり戦略上の課題を整理・提示するとともに、戦略立案から実行・実現までの取り組みについて考えてきました。企業の属する業界や業界内ポジション、流通構造とそのパワーバランスによって戦略の方向性は多岐に渡ります。それぞれの企業が積み重ねてきた歴史も各々だと思います。成功への道筋は一つではありませんが、行動を起こさない限りは衰退の一途をたどることになります。「一貫性」と「継続性」。最後にこの言葉を皆様にお贈りします。ぜひ皆様の企業内で積極的に根気強く取り組まれ、成功されることを祈願して最終講とさせていただきます。長きに渡りご精読ありがとうございました。

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プロフィール

清水 徹

清水 徹(しみず とおる)

株式会社 マーケティング研究協会 コンサルティング・ サービス部部長

大学卒業後、大手プレハブ住宅メーカーに営業職として入社。1997年にマーケティング研究協会に入社。入社後一貫して、「営業力」「マーケティング力」の強化提案を行う企画営業職として多くの業界と関わる。企画営業活動と同時にコンサルティング、営業教育にも携わり「販売代理店・特約店の活性化策立案」「販売代理店制度の再構築」「販売代理店・特約店の機能強化サポートメニュー開発」「メーカー営業担当者のスキルアップ教育」「代理店経営者・経営後継者・営業担当者教育」などの実績がある。

【主な支援実績テーマ/業界】
○チャネル政策立案・展開(コンサルティング/教育)
オフィス設備、OA機器、医療材料、産業資材、建築材料、建築設備、計測装置、工業用部品、など

○エリアマーケティング戦略立案・展開(コンサルティング/教育)
建築設備、建築材料、情報関連機器、OA機器、化学品、エネルギー、搬送機器、ソフトウエア、など

○提案営業力強化(教育)
自動車関連部品、医療機器、建築設備、出版、情報システム、生産機械、産業用ガス、など

○営業マニュアル/営業ツール作成
業務用化粧品、OA機器、情報関連機器、など

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